センター長挨拶

センター長挨拶

イメージング技術は“みえる”化することで科学、技術、ものづくりを革新してきました。その代表例として、小さいものを可視化する顕微鏡から大きな天体を観察する望遠鏡が挙げられます。さらに光を用いる場合に最小観察単位と考えられていた回折限界を超える超解像顕微鏡が2014年のノーベル化学賞を受賞しています。これらの最先端のイメージング技術をもってしても未だにみることのできない対象のひとつに散乱体や揺らぎ場があります。散乱体はすりガラスに代表されるように光の直進性を妨げ、多重散乱により内部の情報や向こう側の像を見えなくします。この散乱現象は、小さいところでは分子の凝集体から生体の器官・組織、濃い霧や豪雨、トンネルなどの人工物、大気の揺らぎなど幅広いスケールで起きる現象であります。

本センターでは、このマルチスケールな散乱場の内部及び散乱場そのものを非破壊かつ高分解能で可視化する包括的な方法論として、光センシング・イメージング科学と数理科学・情報科学を融合させた「散乱透視学」を創成することにチャレンジします(図1)。この「散乱透視学」を元に、特に、生命科学や医学において、時空間分解能、観察領域の広さと深さ、そして情報の質において従来技術を凌駕する生体機能情報の取得を実現します。また、散乱体内部における光の振る舞いを制御する散乱体内部照明技術に取り組みます。これにより、近年研究の進展の著しい、光で細胞活動を操作するオプトジェネティクス(光遺伝学)を高度化するとともに、応用研究として脳機能解明や機能回復・操作に活用します。また、取得された生体機能情報をデータベースとしてオープン化と標準化を図り、世界の研究者に供するとともに、画像ベースのイメージング数理科学を元に生命機能を解明する「イメージング数理生命科学」や「イメージング数理生物学」を創成し、生命科学及び生物学における諸問題を解決することに取り組みます。「散乱透視学」をベースに人類が見たことのない、生きたままの生命活動の観察と操作を皆さんと一緒に実現します。ご興味のある方は是非コンタクトしてください。一緒に取り組みましょう。

的場 修

神戸大学大学院システム情報学研究科

的場 修
革新的融合研究としての散乱透視学
図1:革新的融合研究としての散乱透視学